甲賀五人之者とは、甲賀忍びが五人一組で任務にあたった実務的編成単位であり、集団協働を重視した忍者運用の象徴
●甲賀五人之者とは?
甲賀五人之者とは、戦国時代から安土桃山時代にかけて、近江国甲賀郡(現在の滋賀県南部)を拠点とした甲賀忍びの中核的な運用単位を指す呼称です。特定の流派名ではなく、甲賀忍びが任務にあたる際の基本的な編成・組織形態を表す言葉と考えられています。伊賀忍者が「惣(そう)」や「組」を基礎としたのに対し、甲賀では五人一組の協働体制が重視された点に特徴があります。家康が伊賀者や甲賀者を召し抱えたとされ、三河・終わりなどでも甲賀者が暗躍したとされています。
●名称の意味と性格
「五人之者」とは、
・五名で一単位を構成する
・相互監視、相互補完を前提とする
・個人の突出を避ける
という、極めて実務的で合理的な運用思想を示しています。甲賀忍びは個人技よりも集団としての安全性と確実性を重視していました。
●主な役割・任務
甲賀五人之者は、潜入、探索、奪取、連絡など複合的任務を一組で完結させる存在でした。想定される役割分担は以下のようなものです。
・潜入、探索役
・見張り、警戒役
・連絡、伝達役
・支援、撤退補助役
・統括、判断役
これにより、一人が失敗しても任務全体が破綻しない体制が整えられていました。
●行動様式・特徴
甲賀五人之者の特徴としては、
・五人一組での協調行動
・任務ごとの柔軟な役割交代
・戦闘回避を基本とする行動原則
・任務成功と生還を最優先
といった点が挙げられます。乱波のような攪乱型ではなく、静かで確実な任務遂行が求められていました。
●伊賀忍者との違い
甲賀五人之者は、
・地縁的結合が強い
・小規模単位での自律行動
・武士的組織というより共同体的性格
という点で、伊賀忍者と共通点を持ちながらも、より分散的・実務的な忍び組織であったとされています。
●歴史的評価
甲賀五人之者は、
・忍びが高度に組織化されていたこと
・個人英雄ではなくチームとして行動していたこと
・忍者が職能集団であったこと
を示す重要な例です。後世の「一人で活躍する忍者像」とは異なり、現実的で集団主義的な忍者の姿をよく伝えています。