児雷也(じらいや)は、江戸時代後期に登場した架空の忍者で、蝦蟇(ガマ)の妖術を操る義賊として知られています。妻の綱手、宿敵の大蛇丸とともに「三すくみ」の構図を作り、歌舞伎や講談、映画などに広く展開され、を与えました。
江戸時代後期に誕生した架空の忍者・児雷也は、蝦蟇(ガマ)の妖術を操る義賊として知られています。肥後の豪族の子として生まれ、仙人から授かった力で巨大な蝦蟇に乗り、悪を討つ姿は人々の心を魅了しました。彼の物語には、蛞蝓(ナメクジ)の術を使う妻・綱手、そして大蛇の化身である宿敵・大蛇丸が登場し、「蝦蟇・蛇・蛞蝓」の三すくみ構図を描き出します。この関係性は後世の日本の忍者像(忍者物語)に大きな影響を与えました。歌舞伎や講談、映画に広く取り上げられ、1921年には日本初の特撮映画『豪傑児雷也』が公開。現代では漫画『NARUTO』のキャラクターにもその名が受け継がれています。
児雷也の起源
- 初登場は 文化3年(1806年)刊行『自来也説話』。作者は感和亭鬼武で、蝦蟇の妖術を使う義賊として描かれました。
- その後、**天保10年(1839年)から明治元年(1868年)にかけて刊行された合巻『児雷也豪傑譚』で人気が爆発。美図垣笑顔らによって執筆されました。
キャラクターの設定
- 正体は 肥後の豪族の子・尾形周馬弘行。
- 妙高山の仙人から授かった 蝦蟇の妖術を使い、大蝦蟇に乗ったり変身したりして戦う。
- 妻の 綱手は蛞蝓(ナメクジ)の妖術を操り、敵の 大蛇丸は大蛇の化身。三者の関係は「蝦蟇・蛇・蛞蝓」の 三すくみ構図として描かれました。
文化的影響
- 歌舞伎では河竹黙阿弥が『児雷也豪傑譚話』(1852年)を脚色。
- 映画では1921年公開の『豪傑児雷也』が日本初の特撮映画とされ、尾上松之助が主演しました。
- 現代では漫画『NARUTO』の「自来也」や「綱手」「大蛇丸」に直接影響を与えています。
特徴と意義
- 日本初の“スーパーキャラクター”忍者とも呼ばれ、義賊・妖術・宿敵との三すくみ構造が後世の忍者像の原型となりました。
- 歴史的事実の忍者とは異なり、完全に創作された存在ですが、忍者文化をエンタメとして広める大きな役割を果たしました。
児雷也は「忍者=妖術を操るヒーロー」というイメージを定着させた重要な存在です。伝説と娯楽を結びつけた文化的アイコンで、忍者文化を歴史と伝説の両面から楽しむ上で欠かせないキャラクターです。
児雷也は歌舞伎でも映画でも、妖術と忍者の魅力を最大限に演出した作品として知られています。歌舞伎では様式美とだんまりの場面が見どころとなり、映画『豪傑児雷也』(1921年)は日本初の特撮映画としてストップモーションや二重露光を駆使しました。
歌舞伎における児雷也
- 代表作『児雷也豪傑譚話』は河竹黙阿弥が脚色し、江戸末期から人気を博しました。
- 歌舞伎座では近年も上演されており、2023年の「六月大歌舞伎」では児雷也が一幕ものとして上演。
- 演出の特徴は、蝦蟇の妖術を授かる場面(仙人から力を得て児雷也と名乗る)
- だんまりの場面(秘術書の争奪戦で蝦蟇を呼び出し、花道から退場する様式美)
- 本来の長編を短縮した舞台では、蝦蟇の登場が最大の見せ場であり、観客に強烈な印象を残します。
映画『豪傑児雷也』(1921年)
- 監督は 牧野省三、主演は日本映画最初のスター 尾上松之助。
- 公開は1921年2月1日、浅草富士館にて。
- 特撮技術として、ストップモーション、二重露光、逆回転撮影が用いられ、蝦蟇の妖術や変化を映像化しました。
- 綱手役は片岡長正が演じ、ナメクジに変化する場面も描かれました。
- 上映時間は約21分のサイレント映画で、日本映画史上初の本格的な忍者特撮作品とされています。
文化的意義
- 歌舞伎では「様式美」と「妖術演出」が観客を魅了し、忍者を舞台芸術のヒーローに。
- 映画では「特撮の源流」として後の忍者映画や特撮作品に大きな影響を与えました。
- 児雷也は、忍者文化を舞台と映画の両方で「伝説と技術革新」を結びつけた存在です。
児雷也は、舞台では伝統的な様式美を、映画では革新的な映像技術を通じて忍者像を広めました。まさに「忍者エンタメの原点」といえる存在です。児雷也の「三すくみ構図」(蝦蟇=児雷也、蛇=大蛇丸、蛞蝓=綱手)は、後世の作品に強い影響を与えています。特に忍者や妖術をテーマにした物語で繰り返し引用され、現代のポップカルチャーにも息づいています。
三すくみ構図の影響
- 忍者物語の定型化
「忍者=妖術を操るヒーロー」というイメージを広め、敵対関係を「三すくみ」で描く構造が定番化しました。 - 歌舞伎・講談から漫画へ
歌舞伎での演出が講談や小説に広がり、さらに漫画やアニメに継承されました。
具体的な影響例
- 『NARUTO -ナルト-』
- 主人公の師匠「自来也」、仲間の「綱手」、宿敵「大蛇丸」という三人のキャラクター設定は、児雷也の三すくみを直接踏襲。
- それぞれが「蛙」「ナメクジ」「蛇」に関連する術を使う点も同じ。
- 忍者映画・特撮
- 児雷也の映画(1921年)が日本初の特撮作品となり、後の忍者映画や特撮ヒーロー作品に「変化」「巨大生物召喚」の演出を定着させました。
- 現代忍者像
- 「忍者=ただの隠密」ではなく、「妖術や超常的力を操る存在」として描かれる傾向を強めました。
- 児雷也は、忍者を「超人的キャラクター」としてエンタメに定着させた原点といえます。
文化的意義
児雷也の三すくみは、単なる忍者物語を超えて「キャラクターの関係性をドラマ化する仕組み」として後世に受け継がれました。その結果、忍者は歴史的事実だけでなく、エンタメの中で「妖術を操るヒーロー」として世界に広がっていったのです。こうして見ると、児雷也は「忍者文化の原型」と「現代ポップカルチャーの源流」をつなぐ存在といえます。
