忍術とは、忍者が諜報・潜入・生存・戦闘などの特殊任務を遂行するために用いた技術や兵法の総称です。代表的には「遁術」「呪術」「体術」「忍び道具を使う術」などがあり、実用的なものから伝説的・フィクション的なものまで幅広く存在します。
忍術の基本的な説明
忍術(にんじゅつ)は、忍者が任務を果たすために習得した総合的な技術体系で、その任務は、潜入・隠密行動・情報収集・逃走・戦闘補助などがあります。実際の忍術は、現実的な技術(歩法、火薬術、隠形術など)が中心ですが、後世の物語やフィクションでは超人的な「忍法」として描かれることも多いです。
主な忍術の種類
遁術(とんじゅつ)
逃走・隠密のための術。種類は「五遁」や「天遁十法・地遁十法・人遁十法」などに分類されます。
🥷🏽五遁
- 火遁:火薬や煙で敵の目をくらます。
- 水遁:竹筒で水中に潜み呼吸する。
- 土遁:穴に潜み敵をやり過ごす。
- 木遁:木や布で身を隠す。
- 金遁:金属音を利用して敵を惑わす。
天遁十法・地遁十法・人遁十法は、忍者が敵から逃れたり身を隠すために編み出した「遁術」を三分類したものです。天は天候や天体、地は地形や自然物、人は人や動物を利用する術で、それぞれ十種類ずつ、合計三十法が伝えられています。
🥷🏽天遁十法(天候・天体を利用)
- 日遁:太陽を背にして敵の目をくらます。
- 月遁:月明かりや月齢を利用して逃走。
- 星遁:星を読み方角を割り出す。
- 雲遁:雲の動きを利用して光を遮る。
- 霧遁:濃霧に紛れて姿を隠す。
- 雷遁:稲光や雷鳴に紛れて行動。
- 電遁:静電気などを利用して攪乱。
- 風遁:風に砂や塵を乗せて目くらまし。
- 雨遁:雨音や視界不良を利用。
- 雪遁:吹雪や積雪に紛れて逃走。
🥷🏽地遁十法(地形・自然物を利用)
- 木遁:樹木や材木に隠れる、倒して妨害。
- 草遁:草むらに潜む、草を結んで敵を転ばせる。
- 火遁:火を放ち注意を逸らす。
- 煙遁:煙幕で追跡を妨害。
- 土遁:土をかける、地形の起伏を利用。
- 屋遁:建物の床下や屋根裏に隠れる。
- 金遁:金属や金物を利用(鐘や金属音など)。
- 石遁:石を投げる、岩陰に隠れる。
- 水遁:水に潜る、音で注意を逸らす。
- 湯遁:熱湯を利用して攪乱。
🥷🏽人遁十法(人や動物を利用)
- 男遁:男性に紛れる。
- 女遁:女性に紛れる。
- 老遁:老人に変装。
- 幼遁:子どもを囮にする。
- 貴遁:身分の高い人を利用。
- 賎遁:身分の低い人を利用。
- 禽遁:鳥を利用(鷹を囮に)。
- 獣遁:動物を利用(馬を暴れさせる)。
- 虫遁:虫や爬虫類を利用(蛇を投げるなど)。
- 魚遁:魚を利用して攪乱。
呪術・錯覚系
- 分身の術:素早い動きで複数人に見せる。
- 変わり身の術:丸太や衣服を身代わりにして敵の攻撃をかわす。
- 影縫いの術:影に暗示をかけて相手の動きを止める。
体術・歩法
- 忍び足(抜き足差し足忍び足):音を立てずに歩く。
- 忍者走り:腕を振らず前傾姿勢で走り、障害物に触れにくくする。
忍び道具を使う術
- 水蜘蛛の術:水上を移動するための浮具を使用。
- 穴蜘蛛の術:地面に穴を掘って侵入。
- 観音隠れ:壁や木に身を寄せて動かず隠れる。
歴史的背景
忍術は、飛鳥時代から戦国期にかけて発展したとされ、主に伊賀・甲賀の忍者が有名です。実際の忍術は「兵法」「生存術」「心理戦」に近く、フィクションで描かれる火を吹いたり分身したりする術は、演出上の脚色が多いです。
忍術は「現実的な隠密技術」と「物語的な超常技法」の両面を持っています。これらの術は、漫画やゲームでは攻撃的な「火遁」や「水遁」として描かれることが多いですが、本来は敵の目を欺き、逃走や潜入を成功させるための工夫でした。自然現象や人間社会の要素を巧みに利用する点に、忍者の知恵と柔軟さが表れています。
