柳生一族の陰謀 完全ガイド──深作欣二×千葉真一が描いた権謀と剣の時代劇
1978年1月、深作欣二監督の映画『柳生一族の陰謀』が公開された。『仁義なき戦い』(1973年)で現代ヤクザ映画を革新した深作が初めて手がけた本格時代劇。萬屋錦之介・千葉真一をはじめ、三船敏郎・松方弘樹・大原麗子・志穂美悦子・真田広之(映画復帰第1作)・丹波哲郎・夏八木勲・西郷輝彦と、和製映画史に残る超豪華キャストが集結した。
配収23億円という当時の記録的大ヒット。この映画が果たして何を描いたのか──そして史実の柳生一族とどこが重なり、どこが違うのか。
作品基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公開年 | 1978年1月21日 |
| 監督 | 深作欣二 |
| 脚本 | 野上龍雄・松田寛夫・深作欣二 |
| 制作 | 東映 |
| 上映時間 | 130分 |
| 主演 | 萬屋錦之介(柳生但馬守宗矩)、千葉真一(柳生十兵衛) |
| 英語タイトル | Shogun’s Samurai |
**テレビシリーズ(1978〜1979年)**も映画の好評を受けて同年10月から放映。千葉真一が引き続き十兵衛を演じ、全39話が放送された。こちらは千葉にとって初のテレビ時代劇出演作でもある。
あらすじ
徳川二代将軍・秀忠が急死し、三代将軍の座をめぐる争いが激化する。長男・家光(松方弘樹)を推す柳生但馬守宗矩(萬屋錦之介)は、裏から権力工作を進める。次男・忠長(西郷輝彦)を擁立しようとする尾張大納言(三船敏郎)ら反家光派との抗争は、忍者・剣客・朝廷まで巻き込む血みどろの権力闘争へと発展する。
自由奔放に生きる十兵衛(千葉真一)は、父・宗矩の謀略に複雑な思いを抱きながらも、時代の大波に飲み込まれていく。
ラストシーン──「夢じゃ、夢でござる」と叫ぶ宗矩の姿は、権力を手にした者の空虚さを凝縮した日本映画史に残る名場面だ。
豪華キャスト
| 役名 | 俳優 | 役柄 |
|---|---|---|
| 柳生但馬守宗矩 | 萬屋錦之介 | 将軍指南役・陰謀の主役 |
| 柳生十兵衛 | 千葉真一 | 宗矩の嫡男・自由な剣客 |
| 徳川家光 | 松方弘樹 | 三代将軍候補 |
| 尾張大納言 | 三船敏郎 | 忠長派の重鎮 |
| お菊 | 大原麗子 | 十兵衛を慕う女性 |
| 茜 | 志穂美悦子 | くノ一・根来衆の女忍者 |
| 松平忠長 | 西郷輝彦 | 将軍位を争う次男 |
| 沢庵和尚 | 丹波哲郎 | 宗矩の盟友・禅僧 |
なお本作は真田広之が子役引退後に映画に復帰した第1作でもある。その後の真田は影の軍団シリーズでも活躍することになる。
深作欣二が持ち込んだ「群像劇」の視点
本作の最大の革新性は、深作欣二が『仁義なき戦い』で確立した群像劇の手法を時代劇に持ち込んだ点だ。
善悪二元論ではなく、それぞれの立場で生きる人間たちがぶつかり合う群像劇。柳生但馬守も、忠長も、尾張大納言も、それぞれに「自分なりの正義」を持って動く。勝者が必ずしも正義ではなく、権力を手にした瞬間にその虚しさが露わになる──このテーマは、時代劇でありながら現代劇のような普遍性を持っている。
史実との2つの接点
① 将軍位継承争いは史実
映画の骨格となる「家光vs忠長の将軍位争い」は史実に基づく。徳川忠長は実際に家光との権力争いに敗れ、後に改易・自刃に追い込まれた。映画はこの史実の対立構造を骨格として使い、そこに柳生一族の謀略を盛り込んでいる。
② 柳生宗矩の「大目付」という権力は史実
映画で但馬守が持つ「諜報・監察」の権力は、史実の宗矩が就いた幕府初代大目付の役職と一致する。大目付とは諸大名を監察する役職で、情報収集が職務の本質にある。「剣豪でありながら政治的権力者」という宗矩の史実の姿が、映画の陰謀者像に骨格を与えている。
史実の宗矩と大目付の詳細についてはこちら。 →【子記事②:柳生宗矩は忍者だったのか?大目付と隠密の史実】